- はじめに -
近年、環境保全に対する全世界的な関心が高まるなかで、特に水質汚染は大きな問題となっており、汚水の浄化役として微生物の活躍がクローズアップされていることは、広く知られているところです。
既に活性汚泥法による大規模な公共下水処理が行われ、また一般事業所でも多額の費用をかけて、汚水処理が行われています。
そこで、自然界の持っていた本来の浄化能力を再考いただきたいと思います。
自然界における水は、単に高い所から低い所へ流れるだけで浄化され、小動物、植物がいきいきと生息していたではありませんか。
自然界における浄化能力は、なんとすばらしいことでしょう。
例えば、わずか30年前までの河川、水田、湖沼などは、水の透明度が高く、魚・水すまし・タガメ・カエル・ヤゴ等々、多種多様な小動物が生息しており、きれいな水草なども多く観察されました。しかし、現在はどうでしょう。
これらの小動物および水草を同じように見ることができるでしょうか。
子供たちを川や池で、水遊びさせることができるでしょうか。
また、現在の井戸水はどうでしょう。一説によると、40年前の井戸水と同程度の水質は、100mの深井戸でなければ、確保できないとさえ言われております。まさに私達人間は、わずか30~40年間で自然界の浄化サイクルを破壊してしまったと言えるのではないでしょうか。
弊社が長年研究している自然浄化法”バクチャーシステム”は自然界の浄化サイクル(食物連鎖)を急速に蘇らせるものであり、現在の生物処理の能力を大幅に高めるものです。
以下、実験結果をまとめておりますので、御高覧の上、御考察下されば幸いです。
「バクチャーを使用した、活性汚泥法」
実験1.
BOD550程度の排水(給食センター)
図-4のような各槽を試作し、表-8上段の値で管理する。
曝気槽に60リットルの活性汚泥とバクチャーを入れ、約100時間、12時間毎の間欠曝気を行う。特徴として、繊毛虫類、輪虫類、その他生物層が厚くなり、溶存酸素が高く、悪臭が無く、沈降性が良く、バルキングなどの発生が無い良好な汚泥ができあがる。
その汚泥を前処理槽に約50%(6リットル)を入れ、原水を初日20リットル~7日目80リットル、8日目以降は、120リットルを8時間で投入し、24時間で処理する。
以上の120リットル投入を5~6月の2ヶ月間行ったが、トラブルもなく、正常な運転ができ、処理水も良好なものが得られた。(表-9参照)
原水投入中および投入後のPHの変化を表-10に、Do値の変化を表-11に表す。
また、処理期間中のMLSSの変化を表-12へ、CODの変化を表-13に表す。
実験2.
BOD3500程度の排水(豆腐製造業)
前掲実験1と同じ装置で良好な汚泥を作り、原水を初日と2日目各5リットル3日目10リットル~5日目20リットル、6日目以降は25リットルを8時間で投入し、24時間で処理をする。
以上の25リットル投入を7月中旬~8月中旬の40日間、表-8下段の値で管理運転したが、やはりトラブルもなく正常な運転ができ、処理水も良好なものが得られた。(表-14参照)
原水投入中および投入後のPHの変化を表-15に、Do値の変化を表-16に表す。
「曝気槽に生息する微生物の変化」
「産業排水の浄化についての特徴」
- 約24時間経過すると、ボルティセラの生息が確認できる。
- 送気量は高濃度な排水および汚泥にも関わらず、表-8に示すように極端に少量で運転ができる。
- 汚水処理中に悪臭の発生はなく、原水の持つ臭気は、前処理槽で感じられない程、除去される。
- 高濃度汚泥(MLSS10,000)にも関わらず、沈降性は表-19に示す通り良好である。
- 曝気槽のPHは7.5~8.3と常に高めの値で推移したが、沈降槽では7.2前後の値となる。(表-15参照)
- 原水投入中のDo値は8.3~0.5程度に推移するが、投入完了後2時間程度経過すると、急速に回復する。(表-16参照)
- 汚泥中の微生物は、原生動物~後生動物と、多種多様に生息している。
- BOD、CODの高除去率を確保し、安定化した処理水を得るのとともに、従来の活性汚泥法では除去が難しいと言われた窒素およびリンの除去も、本水質活性石バクチャーを投入することにおいて高い除去率を得られることが確認された。
また、大腸菌についても高い抑止力が確保でき、塩素消毒も必要なく、放流ができることが確認できた。
「余剰汚泥の消化実験」
本水質活性石バクチャーを利用して発生した汚泥の消化と、従来の標準活性汚泥の消化を比較確認する。
実験1.
バクチャー使用沈降汚泥(MLSS1600程度)
上記の汚泥1リットルを容量1リットルのビーカーに2組入れ、1組にはバクチャーを容量比1.5%投入し、1組は何も投入しないで各ビーカーにエアー(3リットル/m)を散気した結果、表-20のような汚泥の減少が見られた。
なお、消化中のDo値を( )内に表示する。
参考までに、散気量を2倍の6リットル/mにした場合の汚泥の減少を表-20に点線で表す。
実験2.
標準活性沈降汚泥(MLSS8000程度)
上記の汚泥1リットルを容量1リットルのビーカーに2組入れ、1組にはバクチャーを容量比1.5%投入し、1組は何も投入しないで各ビーカーにエアー(3リットル/m)を散気した結果、表-21のような汚泥の減少が見られた。
なお、消化中のDo値を( )内に表示する。
従来、沈降した余剰汚泥は、乾燥したり、脱水してから肥料、あるいは産業廃棄物として処理していたが、表-20と表-21を比較して解るように、バクチャー使用による排水処理で発生した余剰汚泥の処理量は、極端に減少する、あるいは自社内で処理できることが確認できた。
接触浄化法「バクチャーシステム」(特許取得)
本浄化法は、自然浄化法「バクチャーシステム」を採用した独自の浄化法である。
以下この浄化法を接触浄化法「バクチャーシステム」と呼ぶ。
接触浄化法「バクチャーシステム」の浄化実験を以下の様な方法で実施し、良好な結果を得ることができた。
使用装置:
長さ125cm、幅15cm、高さ50cmの浄化水路を試作し、水路内を隔壁で12槽に区切り、各槽にはナイロン網を接触媒体として入れた。第1槽は下部より、第2槽は上部より次の槽に流入し、それを交互に繰り返して最終槽に至り、最終槽の上部から流出する構造となっている。
浄化試験その1(食品加工所排水の場合)
試験概要:
水を張った接触浄化水路に、バクチャーパウダー300ppm(27g)を水に溶かして混入し、第2槽にバクチャー300ppm(27g)を浸漬する。
第1槽に上部から産業排水を流入し、最終12槽上部より流出させる。
この接触浄化水路の特徴は、エアー曝気を行わず、自然流下のみで浄化することにある。
流入開始後、1~2週間で接触媒体である網に汚泥状の物質が付着し、これの成長が見られる。この中に生息する生物相により廃水は浄化される。
試験方法:
全容量90リットルの接触浄化水路に250リットルの原水を約24時間かけて流入(約11リットル/hrの流量で滞留時間は約8~9時間である)させ、最終12槽上部より流出させる。
これを毎日連続して行い、流入水と流出水との比較を行う。
なお、流出水の浄化状態は毎日の社内検査で確認するが、社内検査の数値が安定して一定期間経過した時点で、公共の検査機関に試験を依頼する。
試験結果:
流出水の状態は試験開始から徐々に変化が見られ、一週間を経過してからは安定した状態が続き、社内検査では毎日同程度の数値が得られた。
流入原水のCODは70mg/リットルから250mg/リットルと日により変動したが、流出水のCOD値の変動は僅かなものであった。
安定した数値が約一ヶ月続いたため、35日目の流入水及び流出水を採取し(財)岡山県健康づくり財団に検査を依頼した。
試験の結果下記の数値が得られ、水質が改善された事が証明された。
流入水 (食品加工所排水原水) |
|
---|---|
透視度 | 9.0度 |
PH | 5.0 |
BOD | 100mg/リットル |
COD | 89mg/リットル |
SS | 45mg/リットル |
全窒素 | 8.38mg/リットル |
全リン | 1.50mg/リットル |
流出水 (接触浄化槽流出口水) |
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透視度 | 13.0度 |
PH | 5.9 |
BOD | 53mg/リットル |
COD | 35mg/リットル |
SS | 13mg/リットル |
全窒素 | 5.21mg/リットル |
全リン | 0.90mg/リットル |
本試験は小型の接触浄化水路を使用したため、試験装置の浄化能力は上記の通りであったが、水路の長さや深さを伸ばし、接触浄化水路の容量を大きくする事で、滞留時間を増やす、あるいは接触媒体を増やす等、接触浄化水路の条件を変えることで浄化能力を上げる事が可能である。
浄化試験その2(下水を含む産業排水の場合)
試験の目的:
- 排水に下水(し尿水+生活雑排水)が混入した時の浄化率の変化があるかどうか。
- 再現性があるかどうか。
- 冬期の水温低下の影響。
- 排水流入が無い場合の浄化槽の変化。
使用装置:
浄化試験その1の接触浄化水路と同様。
試験方法:
水を張った浄化槽12段槽の内、1~10段槽にバクチャーパウダー300ppm(27g)を水に溶かして混入する。次に第2段槽にバクチー300ppm(27g)を常時流入水が接触するように浸漬する。
今回は流入排水量を300lとし、前期を24時間(12.5l/hr)、後期を20時間(15l/hr)で流入させた。
試験結果:
流入排水のCODは100mg/l~200mg/lと日により変動したが、浄化処理水CODは35~50mg/lとほぼ安定していた。
試験期間:
平成16年10月27日より平成17年1月18日までの84日間。
土、日、祭日及び12月28日より1月5日までの間は排水流入無し。
10月 | 11月 | 12月 | 1月 | |
月平均 | 13.3℃ | 11.8℃ | 6.3℃ | 2.9℃ |
経過日数 | 開始日 | 1day | 8day | 14day | 21day | 28day | 35day |
---|---|---|---|---|---|---|---|
処理水(mg/l) | 41 | 17 | 50 | 64 | 41 | 60 | |
流入水(mg/l) | 52 | 102 | 192 | 228 | 173 | 246 | 144 |
水温(℃) | 11 | 13 | 15 | 9 | 9.5 | 8 |
経過日数 | 42day | 49day | 56day | 61day | 71day | 77day | 83day |
---|---|---|---|---|---|---|---|
処理水(mg/l) | 46 | 64 | 44 | 41 | 14 | 64 | 50 |
流入水(mg/l) | 253 | 154 | 198 | 168 | 201 | 141 | 114 |
水温(℃) | 8 | 7 | 4 | 6 | 2 | 1 | 5 |
平成17年1月18日の流入排水及び浄化処理水の計量証明書
試験目的の結果:
- 下水混入により若干のCODの上昇が見られたが、明確な変化は無い。前回(浄化試験その1)35mg/lが今回(浄化試験その2)47mg/lで浄化率は60%が53%となっている。
- 再現性に付いては数回の試験において、ほぼ同等の値が得られた。
- 急激な変化は見られないが、寒くなるにつれて徐々に浄化率は下がる傾向がある。生物相は表面に氷が張っていた状態でも、繊毛虫等が元気に動き回っていたが、種別においては動きの鈍い物も確認される事と、若干の浄化率が低下した事を考え合わせると、水温低下は処理能力に関連があると言える。ただし、これは装置を土中に設置すれば改善可能である。
- 10日程度の排水の流入が無い場合でも、生物相は元気に動いており、すぐに処理水の悪化は見られない。それよりも滞留時間の延長により浄化槽内のCODは14mg/lまで下降していた(1月6日測定値)。この事により滞留時間が長ければ、かなりの浄化が期待できる。
総合的評価
今回の試験では、長期排水流入なしでも、浄化槽内の水質は保持出来る事が確認できた。その後排水流入を続けると徐々にCODは常時流入の値に落ち着いて行った。この事から滞留時間の延長は浄化能力を上昇させる事が確認できた。
試験開始から正常な運転に至るには2週間かかる事は、今回でも再現性を確認した。
上記の結果、より高い浄化能力を求めるならば装置の大きさ等を変えて、滞留時間を長くすれば良いと結論づけられる。